【ベース】理想や目標は実現しなくていい理由をマイケルジャクソンから学ぶ
※画像:マイケルジャクソン・シルエット・デジタルアート/ライセンス:DMCA/出典:Wallpaperbetter
「理想」に必要な自尊心とは
マイケルジャクソンの代名詞が「キング・オブ・ポップ」と言われるのは、誰かがそう呼んで広まった結果なのですが、この代名詞が「あなたは何者なのか?」の答えになる部分です。
で、人生は旅(経験)をたくさんしないと、自分の代名詞はできないんですね。
それも代名詞が自分自身と完全一致していないと、他人の理想を生きることになるので、ものすごく生きづらくなります。
たとえば、あなたの代名詞が「デキル人」で、あなた自身が「デキナイ人」だとしたら、あなたは相手の期待を裏切らないために、デキル人で在り続けなければなりません。
そして、周囲にデキル人だと思われているあなたは、彼らを頼れなくなります。
なぜなら、あなたがデキル人だと思われているから。
この瞬間、あなたの中にある純粋な自尊心は「プライド」に変化します。
言い換えれば、失った自尊心の代わりをプライドで埋めているわけです。
自尊心をおおざっぱに言えば、「デキてもデキなくても私は愛されている」という自信のことです。
もっと平たく言うと、生まれた時に神様が付けてくれた「可愛らしさ」のこと。
何をしても許されて、何でも無条件で与えられて、どんな要望も通って、「何をしてもしなくても私は愛されている」と思わせてくれるものです。
結局、もらい尽くしていることが大人になる前提なんですね。
だけど、自尊心を失うと、それを補うためにプライドが生まれます。
いまさら聞けない、相手も忙しいから、これくらい自分でやらなきゃ、デキナイと思われたら嫌だし、見捨てられたら悲しいし、二回も同じこと聞けないし・・・。
知らないと思われたくないし・・・。
これらを突き詰めていくと、「恥をかきたくない」という自利(保身)が、プライドとして出てきているのがわかると思います。
相手の話を理解できていないのに、「そうですね~」と相づちを打ったり、経験のある人も多いのではないですか?
自分の幸せしか見えなくなっている状態が、プライドとして態度(言えない、聞けない)に出てくるんですね。
めんどくさい相手に調子だけ合わせるのは、私もよくやります。
まず、自分の理想を持つには、他人の理想を生きないために自尊心が必要です。
自尊心がないと思うのなら、自尊心の復活が必要ですし、それは愛されていなかったという解釈を変えるために、過去の自分を変える必要があります。
マインドセットを変えないといけないということですね。
他人の理想を生きたマイケルから知る「本当の自分」
「スリラー」は、1982年の発売以来、売上枚数を超える人がいません。
アメリカではイーグルスに抜かれたので歴代2位だけど、全世界の総数でトップを守り続けています。
今が2023年だから41年間、それもマイケルが死んで14年も経ってるのに、彼を超える人がいないんですね。
だから、彼のブランドは、キング・オブ・ポップ。
でも、彼自身は違いました。
世界中が、今でこそシルエットだけでマイケルを想起するブランド力には、壮絶なストーリーがありました。
私たちから見えるのは、たくさんの訴訟を抱え、少年愛だと言われた、白斑の皮膚病を理由に全身漂白した彼で、みんなのイメージにあるのは「整形」でしたね。
82'年、スズキは、スクーター「LOVE」を発売、CMに起用されたのはマイケル。
当時の社会的概念には、アパルトヘイト(黒人差別)が普通にありました。
それと、外国のCM業界は、俳優やアーティストと、その持ち歌を起用しないのが常識でした。
そこに目をつけたのがスズキです。
マイケルはその時、23歳、全米1位の作品を連続で記録して、すでに有名でしたが、日本での知名度はありませんでした。
スズキは、マイケルと数百万で契約。
その後、マイケルは、ペプシから10億円でオファーされています。
スズキと契約した頃のマイケルは、「スリラー」を制作している最中でした。
日本では空前のディスコブームだったこともあり、数百万という契約料は「スリラー」によって何十億に化けたのです。
スズキは、マイケルを2度起用しています。
1回目は「Don’t Stop 'Til You Get Enough」を、2回目は、大ヒットになった「Off The Wall」を採用。
2曲は日本の若者を虜にしました。
マイケルを知らない人でもどこかで聞いたことのある曲、という現象が起こりました。
これぞブランディング効果ですね。
日本で人気が出たマイケルも自身じゃなかったので、次の試練が訪れます。
ペプシのCMで演出に使用した火薬がマイケルに飛び火、髪が燃え上がり、全身は致死量に近い大火傷を負いました。
ペプシが支払った慰謝料の全額をマイケルは、医療センターに寄付しています。
医療センターは、そのお金で酸素カプセルを作りました。
致死量に近い火傷を負った人にしかわからないと言われる痛みは、全身が燃えたぎる激痛が続くのだそうです。
その痛みを緩和するのが、酸素なんだそう。
マイケルは、この火傷をきっかけに、薬物の使用量が増えて、最後は一番強い麻酔薬にまで手を染めていきました。
メディアが面白おかしく書く事実とは違うマイケルの苦悩は、これだけでありません。
あの天性の才能と言われたムービングウォークも、宙を歩いているかのように見える軽快な足さばきも、熱しられた電気コンロの上で練習していたのです。
足を下に着けると熱くて痛いから、足を着けない血が滲むような訓練が、彼の才能を開花させていきました。
マイケルのお父さんがスパルタだったことは有名ですが、「巨人の星」の星一徹さながらのことがあったんですね。
鼻が悪い、目が変だと、マイケルの自尊心は、お父さんによってどんどん失われていきました。
そして、白斑や火傷などが動機を後押し、他人の理想を生きるマイケルが生まれたのです。
私は以前、才能だけでは生き残れないと書きました。
自分の本当にやりたいことは、自分の素材の掛け合わせで見つかっていきます。
本当に好きなこと(情熱)×得意(才能)=やりたいこと
やりたいこと×使命=本当にやりたいこと
言い換えれば、才能がなくても本質さえわかれば、人はなんとでもなります。
本質とは、あなたの特徴のことで、あなたが大人げない理由でやっていないことが本質であることが多いんです。
自分を生きている実感は、本質を出せている時ですから、情熱を引き出すためにわざわざ本当に好きなことを見つけるまでもないということです。
マイケルの本質は、自伝にある通り、ピーターパンでした。
だからネバーランドを作ったんですが、私は彼が大切なことを忘れていると思いました。
必要なものはネバーランドが先ではなく、10歳の自分で大人の振る舞いをすることだと思ったのです。
大人の振る舞いというのは、知性とか知恵のことです。
彼は、10歳の純粋なまま年を取り、世間を知らなかったことが自身を追い詰めてしまったと言われるのは、私も同じ考えです。
中森明菜さんもATMの使い方がわからなかったそうです。
2人とも常にSPなどが周りにいて、自由に買い物をするとか、日常生活で誰もがやっているライフスタイルができなかったんですね。
マイケルも一般人になりたくて、スーパーを貸し切って買い物をしたことがあると言っています。
それでもSPがいたんですけどね。
世間を知らないのは擦れていないということだけど、人の子供を自宅に泊める時は親の了承がいる、そんな簡単なことがマイケルにはわからなかったのです。
それだけ彼は無垢で、やさぐれていないかったという意味です。
そんな彼も子供の前ではお酒は飲んじゃいけないと考え、コーラーの空き缶にワインを入れて飲んでいたと自伝にありました。
これも動機が間違っていることに気づけなかったと私は考えます。
子供の前でお酒は飲んじゃいけないと思ったなら、子供のいないところで飲むという選択ができるのに、子供の前で隠れて飲むことは正しい選択とは思えません。
子供はコーラーを飲んでいると信じているわけですから、隠れる動作が後ろめたさであり、「間違った動機」だということです。
私の本質は、子供みたいに突飛なところなんですけど、それをやらないのではなく、相談してからやるようにしています。
みんな最初は、奇想天外で驚くんですけど、そう思うに至った背景やプロセスを説明すると納得してくれますし、賛成もしてくれます。
理想を実現させる「やる意味とやる価値」
自分の理想を生きていることが前提であれば、何か行動する時、まず2~3回やってみて反応があれば、その反応が「やる意味」になります。
でも、「いいですね」と言われるだけなら、それは反応とは言いません。
相手が時間を割いてくれて、行動した結果、「いいですね」なら反応があったということです。
言葉じゃなくて行動を見てください。
「時間ができたら」も反応なしとみなします。
お世辞とかお愛想、社交辞令を受け入れてください。
興味がないとハッキリ言えない「悪者になりたくない相手の事情」を受け入れてください。
私たちは、浅い部分で大人の付き合いをしているのが現実ですしね。
次に、1人の人が何回リピートしてくれるか?
その「1人」が何人いるかを見てください。
定期的なリピートが1人でもいたら、やる価値は生まれます。
有料だったら、その人があなたに払った金額も見てください。
月間や年間で総額いくら払ってくれていますか?
その人があと何人いたら潤いますか?
リピートが増えないなら、リピートする理由が伝わっていないので、あきらめないで、1人の人があなたを求める理由を、他の人に伝わるように努力してください。
そして、ここから一番重要なことをお伝えします。
やる意味もやる価値も考えたことは、必ずフィードバックしてもらってください。
1人で考えたことにフィードバックがないなら、それはただの自己都合、自己解釈、自己満、もしくは自己犠牲による選択にすぎません。
マイケルが孤独だと言われていたように、私たちはみんな孤独と隣合わせで生きています。
それは、相談できる人を求めているということなんですよ。
1人で決めたことを賛成してくれる誰か、逆に叱ってくれる誰か、愛情をもって接してくれる誰かを求めているのです。
フィードバックできない理由があるのなら、自尊心や自己重要感を守るために生きているのかも知れません。
傷つきたくない、恥をかきたくない、そんな自利が成果を遠ざけていることを疑ってください。
昔、アンケートの回収率が悪い人に、「あなたは他人のアンケートに協力していますか?」と聞いたら、めんどくさいからやっていないと言ってました。
自分がしないフォードバックを他人にしてほしいと思うのは無理な話です。
それは、やる意味とかやる価値以前のマインドに問題があります。
理想や目標は実現しないほうがいい2つの理由
理想や目標が実現しないほうがいい理由の1つは、実現してしまうと、そこでおしまいだからです。
おしまいということは、必要とされなくなるということです。
たとえば、高学歴の人にニートが多いのは、大学に入るのが目標で、卒業してしまったら社会で何をしたいのかわからないからです。
たとえば、50代までに老後資金を貯めるFIREをやった人の中には、実際、死ぬまで遊んで暮らせるお金を前に、やることがなくて苦しいと言う人が多いです。
2つ目は、理想や目標を持つ目的は、実現するためじゃないからです。
自分が迷った時、困難な状況に陥った時、苦しい時の「支え」になるためです。
何のために自分はこれをしているのかがわからなくなった時に、理想や目標を思い出すことで、他人に流されずにすむんですね。
特に、苦しいときほど、人は誘惑に遭います。
それは、人間共通の最大のニーズが「楽をしたい」というものだからです。
でも、苦しみから逃げる手段が「楽をすること」になってしまうと、苦しみは残り続けます。
その残った苦しみは、次の悪魔の囁きに負けてエスカレートしていきます。
だから、理想や目標は、生きてるうちに実現不可能なくらい崇高なものに設定しなければなりません。
理想を持つ前に自尊心を取り戻す。
ここを忘れないで。
山本真弓
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